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回復応援インタビュー

ダンプ松本さん

女子プロレスラー、タレント。1980年代に「極悪同盟」の悪役レスラーとして人気を博す。パチンコにハマった経験をもつが、8年ほど前から止めている。

ダンプ松本さん

女子プロレスラー、タレント。1980年代に「極悪同盟」の悪役レスラーとして人気を博す。パチンコにハマった経験をもつが、8年ほど前から止めている。

インタビュアー
塚本堅一(元NHKアナウンサー)

もう止めたいと思ったとき
    • 塚本
    • ダンプさんが、初めてパチンコをしたのはいくつぐらいの時でしたか?

    • ダンプ松本
    • 19歳ぐらいですね。トレーニングのマラソンコースにパチンコ屋さんがあって、練習中だったんだけど、ジュースでも飲みたいねと。その時、2〜300円ちょっとのお金を持っていて、そこにパチンコ屋があったから入ったのが最初です。そのころは、まだ100円玉も、500円玉も入れられたんです。それでやったら、一発かなんかで出ちゃって、300円か500円位が9800円くらいになっちゃった。

    • 塚本
    • 当時の9800円だと、結構大きいですよね?

    • ダンプ松本
    • でかいでしょ。それから、ハマった感じかな。まだその頃はプロレスの練習で忙しいし、お金も無いし、試合もあるし、なかなか行けなかった。だけどまわりの人も会社の人も好きだから、遠征なんかで地方に行くと、パチンコ屋さんが近くにあるホテルに泊まるんですよ。チェックアウトが10時でしょ。それで、11時とか11時半ぐらいまでの間、出発する前に1時間半ぐらいパチンコ打てるっていう感じでやっていました。まだその頃は試合前のひと時だから良かったけど、辞めてからかなぁ、もう年がら年中毎日行きたくなっちゃったっていうのは。

    • 塚本
    • 現役時代は、うまくパチンコと付き合えていた?

    • ダンプ松本
    • 忙しくて、そうそう行けなかったっていうのがあるからね。

    • 塚本
    • どちらかというとパチンコがうまく気分転換になっていたんでしょうか。問題になるなんて思っていなかった?

    • ダンプ松本
    • あー。もう、全然。それほど無理してやろうとも思わなかった。

    • 塚本
    • では、ハマっていた頃はどれぐらいやっていたんですか?

    • ダンプ松本
    • もう、朝から並んで整理券もらってるおばちゃんたちと仲良しになっちゃうぐらい。 出る台があるパチンコ屋さんだと、8時位から整理券を配って、みんな自由にしといてまた順番で店に入らせる。並んで毎日行っていたかな。

      自分がつぎ込んだ台を、よその人に取られるのが嫌だったからね。だから動かないんですよ。一度、7〜8万入れたときに動いたら、友達で同期の大森ゆかりがポンと座って、1000円もしないうちに大連チャンしたのね。

    • 塚本
    • あー、それは悔しい!

    • ダンプ松本
    • それ見て悔しくて!「あんた良かったじゃん。全然知らない人に取られるより私に取られる方がいいでしょ?」って言われたんだけど、全然知らない人に取られる方が嫌じゃない。

      「やってたの知ってるのに、何でここ座るんだよ!!」ってなったからね。それから動かないようになったかな。その台に賭ける。次の日も次の日も。

    • 塚本
    • お金もかなりつぎ込んだんじゃないですか?

    • ダンプ松本
    • お金も使ったね。5万は毎日使っていたかな。車が買えるくらいは負けたかな。
      取り返せていたんだよ、最初は。出る時は楽勝で取り返せていたんだよね。

    • 塚本
    • その時の快感を覚えていると…。

    • ダンプ松本
    • 出るんじゃないかと思って、つぎ込んじゃう。その時の気持ちが忘れられないから。「いつか爆発する、絶対爆発するだろう」って思って、取り返してもまた入れちゃう。

      一度、勝った日と負けた日を書いておいた事があったんです。書くようになって、これだったら美味しい物を食べたほうがいいとか、温泉や海外旅行に行ったほうがいいとか、そういう気持ちになってきて、少しずつパチンコに行くのが減っていきました。最終的にはもうやっているのが苦痛でしょうがなくなっちゃったんですよ。皆は出るのに自分だけ出ない運がないんだ、友達と行っても友達は出てるのに自分は出ない。泣けてくるくらい嫌になっちゃって。それからパチンコ屋さんに行くと苦しいから、「そんなお金使って苦しい思いするんだったら酒飲みに行った方がいいだろう」って行くのをやめたんだけどね。

    • 塚本
    • 他の人は、長いこと時間がかかってその境地に辿り着く人が多いと思うんですよ。

    • ダンプ松本
    • あまりにお金も使い過ぎてね。「これじゃ何のために仕事しているんだろう?」ってなりました。毎日笑っているのならいいけど、たいした物食べずにずうっと座って、ヘルニアになって腰も痛くなるし、イライラしてきちゃうし。出てる時なんて一瞬だから。

      結局、夜遅く蛍の光がかかるまでやってると、情けなくなるんですね。負けた時に限ってストレスで飲みに行きたくなって、余計にお金を使っちゃう。それに、負けた時の方が次の日も余計にパチンコに行きたくなっちゃうでしょ。取り返したいっていう気持ちがあるから。

    • 塚本
    • ものすごい悪循環なんだけど、そこから抜けられない人が多いじゃないですか。ダンプさんは、もうパチンコを止めて7年ぐらいですか?

    • ダンプ松本
    • そうですね。7〜8年経つかな。今はパチンコ屋の側も通らないし、ネオンを見ても行きたいと思わないから大丈夫。

    • 塚本
    • パチンコを楽しんでやっていた時期は、どれくらいだったと思いますか?

    • ダンプ松本
    • わーい!やったー出たーっ!て楽しんでいるのは、ほんの何回かだよね。みんなで一緒にプロレス仲間で行ったりしている時に、自分だけ出なかったりするのも嫌だし、友達だけ出なかったりするのも嫌なのよ。みんなで喜んでも一人だけ出なかった子がいると、自分がいつそれに回ってくるかわからないから、喜べない。

      だからパチンコ屋は一人で行ったほうがいいんだけど、わーって喜んだのはそんなにないです。30万以上稼げた時が、2〜3回あったかな。

    • 塚本
    • そんな楽しい経験が無いのになんでそこまで続けられたのかな?

    • ダンプ松本
    • 不思議だよね、ほんとに。呼ぶんだよ「おいで、おいで」って(笑)

    • 塚本
    • でも自分からもっと楽しい事があるっていう風に気づけたっていうのは良かったのではないですか?

    • ダンプ松本
    • たまたま、後輩たちとみんなで飲みに行った時に、パチンコ代で使うよりも、お金がかからなかったんですよ。で、楽しかった。後輩がいると奢ることもあるけれど、みんな喜んでくれるじゃない。それでいて、パチンコしているよりも楽しい。 そこに、気づかないんだよね。

    • 塚本
    • 依存症者は孤独の病と言われるので、どんどん一人で隠れて行くようになるけど、一人でパチンコをやるよりも、仲間とワイワイやっている方が楽しい、人のつながりを自然と取り戻されたのが何よりだったのかなと思います。

      店に常連さんや、店員さんと顔なじみになるところにつながりを求めるのはありませんでしたか?

    • ダンプ松本
    • 気やすく今日はどう?て話しかけてくれて、普通のパチンコ仲間として接してくれるでしょ。ダンプ松本が来た!という感じでなくてね。「さっきの人いっぱいつぎ込んでいたよ。今日は出てないよね」なんて話しかけてくれるけど、仕事の話は一斉しないの。パチンコの話だけで。プロレスの話もしない。そういうところは楽かな。みんな自分の台に夢中だから。それが楽だったんだと思う。

    • 塚本
    • そういう意味では、気分転換として日常から離れることもできたけれども、逆にそれがストレスに感じるようになったら、ちょっと立ち止まった方がいいという感じですかね。

    • ダンプ松本
    • 実は、うちのお父さんがずっとパチンコやっていてね。お母さんが書いていたノートが今もあるんです。「お父さんに何万貸した、返してくれるって言ったのに返してくれないじゃないか!」ってノート1冊書いてあって。そういうのを書いてあるのを見ると、お父さんに似ちゃったんだなって思う。

      パチンコは自分もさんざんやってきたから、止めましょうとか、行かない方がいいよとか、決して言えないんだよね。楽しいって、救われた時だってあるわけだから。ただ、やっていてむなしくなるの。その時はもう止め時じゃないかなって思う。これは、人に言われても、自分で気づかない限り止められないんだよね。いくらみんなで、止めろ止めろ言っても

      3000円使うんだったら、そのお金で肉食った方がいいでしょ?だけど、パチンコやっている頃は、肉なんて食わなくたって生きていけるし、この3000円があればもしかしたら出るかもしれないって思っちゃうわけ。この1000円を崩して何かごはん食べに行くなら、ここでパンを食べて済ませて、もしかしたらラストの1000円で出るかもしれないって必ず思っちゃう。

      人に言われたからって、「わかった。止めるよ。」って自分はならなかったと思う。たぶんみんなもそうだと思うんだよね。自分でやっていて、虚しくなる時が絶対あるの。でもそれを「そんなことない、まだ楽しい時が来るんだ!」って思わないで、一度でも虚しくなった時が止め時じゃないかな。その時、止めた方がいいと思う。ほんとに疲れにパチンコ屋に行く感じになっちゃうから。

    • 塚本
    • 金の底つきじゃなくて、感情的な底つきですよね。すごく冷静な気がします。その境地に自力で辿りつけたのは。自分の感情に素直に向き合えたからじゃないですか?

    • ダンプ松本
    • 向き合えたのかなあ。辛かったもん、だって。 こんな憂鬱なことはないっていうくらいだったね。何してるんだろう自分は…。

    • 塚本
    • 行って疲れるようになったら止め時っていうのは、一つの指針になるような気がします。

    • ダンプ松本
    • つらい思いしてまで、パチンコやることないからね。お金だけでもつらいのにさ、心まで持っていかれちゃったら、たまったものじゃないでしょ。気持ちだけはすごく楽しいというならいいけど、お金は持っていかれるわ、心も持っていかれるわだったら、何の為にここにいるのかというのがあるからね。心まで持っていかれた時にはもうダメだよね。